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ゴッゴル社長日記「ニートが働くと日本の社会は悪くなる。」を読んで。ちょっと古い記事だが。というか、生まれて初めてTrackBack使った。つーか釣られてるんですか。
玄田有史「ニート」の出版とか今年の経済白書とか以降、「ニートが生まれてきたのは社会のため、だからニートが働けるように支援をしよう」という論調が五大新聞辺り(但し産経新聞以外)では主流になっている現在、これだけ大声で反対のメッセージを発する意義はそれなりにあると思う。
既に職を持っている人にとっては、ニートが働こうとするのは、あまり嬉しい話ではない。当たり前だ。特に今ニートである集団が労働市場に参入してきた場合、最も多く参入してきそうなのはアルバイトなわけで。派遣社員やフリーターにとっては労働力としての競争が激しくなるのは事実だろうし、正社員とて安い労働力の圧力から完全に逃れられる訳ではない(正社員/非正社員の経済格差を享受出来る立場であることも確かであろうが)。経済合理的に活動する個人にとって、ニートetc……が新たに労働市場に参入してくるのは歓迎できない事態だ。
ニート本人の事を考えてお情けを掛けてやろうなんて考え方だとしたら、おかしい。そんな理由だったら納得する人は少ないだろう。
しかし、これは個人の問題ではなく、企業の問題でもなく、社会全体の問題なのだ。日本の問題と言ってもいいだろう。無業者が増えると社会の不安定要因になるから問題なのだ。窃盗が増えているという統計を西村氏は引用しているが、単純にニートが仕事を探して、ニートが減って失業者が増えたとしても、無業者=(失業者+ニート)の絶対数はそんなに変わらないのだから、「失業者が増える」は問題ではない。しかし、「多少」給料が減るので、「多少」お金が足りなくなって「多少」窃盗が増えるのは事実かもしれない。しかし、なんといっても無業者を減らす事に焦点を当てるべき、のはずだ。
むしろ今の日本で、多少自分の収入が減っても、一定量しかない仕事を分けて無業者を減らそうという、そういうのを可能にする圧力が弱い(無い)というのが問題なんじゃないのか。
だがしかし、そんな圧力を発生させる源は、どうも見当たらない。基本的に日本の労働組合は正社員のものだしな、と(海外でもか、むしろ。むろん日本には「御用組合」なんていう素晴らしい言葉もある)。まぁ正社員の間でのワークシェアリングも上手くいかない(「ワークシェアリング」は「賃下げ」の言い換え語なんだとか)日本で、正社員に「仕事を分けてくれ」って言う方が無茶ではあるし、オランダモデルなんてのは夢のまた夢ですが……。
で、最近ひきこもり支援のNPOが何を考えているのかいうと、僕が聞いてきた例では「親の金に使って自営業を初めて、それで自立までもっていこう」というプランとかが出ているそうなのですね。あと、共同でリサイクルショップ作ったりとか。雇ってもらえないなら仕事を作ってしまおうという方針らしいのですね。まぁ働いた経験の乏しい人が自営業を始めたところで、どれだけ自立できるか疑わしいとか、結局その自営の何かがほかの人の仕事を奪って成立する部分もあるだろうとか、まぁ良い見通しばかりではないわけで。悩ましい。
で、行政とか立法とかから企業の方にに介入しようとか、今やってるかというと、多分やってない。っていうか「規制緩和」ありきの世の中でそんなことやったら避難轟々間違いなし。Jobカフェとか、デュアルシステムとか、無業者個人を訓練したり尻を叩いたりする施策は立っているけれども。うわー、駄目じゃん。このままだと競争激化を招いて、資源を経済セクターに取られっぱなしではないですか。公共事業増やすのも国家財政を圧迫するからNGってことで、やっぱり少ない仕事をみんなで分け合うしか道はなさそうなんだけどな。でも立法とか行政とかで労働周りの規制を増やしてそれを実現しようとすると、ますます面倒を避けて色々と企業の海外移転が進みそうだし。うわー、駄目だ。
個人的にはイギリスの、無業者を雇った企業に補助が出るという施策を見習うと良いんじゃないかと思っていたりします。自国の無業者を雇う誘因を作るわけですね。でもって、無業者が無業者のままでいようとすると生活保護打ち切りという「ムチ」もついてたり。いろいろ批判も在るそうですし(その批判も、A.ギデンズの「第三の道」も、まだ見てないのでちょっとこう言ってしまうのにも不安があるのですけど)。企業に金をばらまいてしまうというのは支持は中々得られなさそうですが(移民抑制策というオマケも付いてるらしい)、将来的に生活保護受給者が無茶苦茶に増えてしまうよりはマシではないかと。
ニートの大半が富裕層あるいは「勝ち組」ではないということにも注意。(以下、小杉礼子「フリーターという生き方」から数字などを引きながら進める)。
経済的余裕があると考えられる大卒無業者(=失業者+ニート)や大卒フリーターは、「パラサイトシングル」等が取り上げられてきた関係で今まで最も注目されてきた部分だが、これは正社員に多くが移行している(大学卒業直後、非正社員だった場合、無業者だった人場合のどちらの場合でも、おおよそ男性の2/3、女性の1/2が正社員に移行しているそうだ/日本労働研究機構「日欧の大学と職業---高等教育と職業に関する12カ国比較調査結果」2001年、より)。新卒重視の採用慣行があるので、新卒で即正社員になった人に比べて、経済格差はついてしまっているようだが、まぁ時間をその格差分で買ったと考えれば、比較的勝っている方ともいえる。
だが、フリーターについていうと、大卒/院卒フリーターはフリーターの中の1割。大卒フリーターは少数派なのだ。残りのフリーターは、短大/高専卒が22%、高卒/中卒が68%。(2001年総務省「労働力調査特別調査」からの推計、中退は最終学歴で計算している)。大卒は少数派なんである。むしろ深刻なのは中卒/高卒とか中退したりとかで仕事に付きにくい結果フリーターにしか成りようがなかったりする部分なわけで。性差も問題だし(女性は正社員になりにくい。やはり日本の慣行によるものだ、と)。まぁ、ニートもフリーターと似たような比率か、もっと大卒が少数派になっているだろうと思う。今、資料はないけれど。
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